皆さんは「単眼症」といった言葉を聞いたことはあるでしょうか?
単眼症とは脳の奇形腫例の1つであり、当たり前のように2つ存在する「目」が1つしかない極めて珍しい先天性の奇形です。
ほとんどが生まれることすら叶わない単眼症ですが、なんと日本では2歳まで生きた症例があります。
今回は単眼症の原因と実態、生存率や寿命について解説していきます。
単眼症の正体とは?原因や寿命を解説!
単眼症の特徴として、目は白目がほぼない状態で、まばたきもせずにまぶたやまつ毛が無いことが挙げられます。
また、必ず鼻の奇形を伴い鼻自体が無い、もしくは小さな突起があるだけのことが大多数です。
嗅神経は欠如しており視神経も1本で、様相だけではなく器官としての顔面の機能すらままならないと言われています。
では、現代の医学ではどこまで単眼症について解明されているのでしょうか?
ここからは単眼症の原因や寿命について見ていきましょう。
単眼症とは?
単眼症とは顔の中央に眼が1つしかない奇形症例で、全前脳胞症の最重度の症例の1つともされています。
人間の脳は胎児期に前脳部分が2つに分かれることで左右の大脳半球が形成されます。
しかし、左右に分かれるのを途中で停止してしまうことで脳の働きが止まってしまい、場合によっては脳だけではなく顔も左右に分かれず発症するようです。
単眼症のほかに象鼻と呼ばれる額から垂れ下がった鼻も症状の1つです。
医学界でも長く生きることは大変難しいと明言されており、別の名前で呼ばれることもあります。
・キプロス症:ギリシア神話の巨人キクロプスが1つ眼であったという話に由来
そもそも、どういったことが原因で単眼症は発症するのでしょうか。
単眼症の原因は遺伝子的なもの?
単眼症は本来2本であるはずの13番染色体が3本ある、「13トリソミー症候群」という染色体異常と遺伝子変異による遺伝的異常が原因と考えられています。
そのほか、化学的な原因や環境的要因もあるのではという意見もあります。
- ビタミンAの摂取不足
- 脳の発達を阻害する物質が摂取された場合:薬物、アルコールなど
- 強い精神的ストレス:DV(ドメスティックバイオレンス ) など
- 糖尿病
- 放射能の被ばく
しかしこれらに医学的な根拠はなく、発症原因にはまだまだ多くの謎が残されているようです。
単眼症の寿命が短すぎる?
単眼症は妊娠しても早期に自然流産するか死産することが多く、出生自体が難しいとされています。
脳や気道が異常であることに加えて、出生しても知能障害や運動障害・てんかんや痙攣発作なども起きやすく、すぐに死んでしまう可能性が高いのです。
特に、鼻の形成が半端なため自発呼吸が出来ず死に至ることが多く、目が1つということに加えて生存能力も著しく低くなってしまうようです。
単眼症は人間よりもヤギに多い?!
単眼症は、人間だけではなく動物にも見られます。
これまで世界中でヤギやヒツジ・サメ・イヌ・ネコなど哺乳類に多く発見されています。
特にヤギでの発症例が多く、ヤギは単眼症でもしばらく生存できる個体が存在するため、度々話題となります。
単眼症は他の奇形を伴うことが多いためまつ毛やまぶたがなく、耳も1つで鼻やあごの形成も不完全なものが多いようです。
単眼症の日本での症例はある!実話で症例を解説!
単眼症は流産や死産のリスクが大変高い症例です。
胎児は子宮内で胎盤を通して酸素や栄養を取り入れますが、単眼症は脳の発達が正常に行われず自身で呼吸することも難しいためです。
しかし、日本では2歳まで歳を重ねた実例がありますのでどのような状況だったのかを紹介していきます。
単眼症で2歳までの生存例が日本である?!
2015年ごろに日本で生まれた単眼症の男の子が2歳まで生きた例には、どのような背景があったのでしょうか?
妊娠4か月の胎児超音波検査により全前脳胞症とともに単眼症であることが判明し、死産になる可能性が高く、長くは生きられないという判断から夫婦は医師から中絶を勧められました。
医療関係者のみならず義理の家族から心ない言葉をぶつけられるも、夫婦は出産を選択します。
そして胎児は妊娠39週まで育ち、無事出産することが出来たのです。
赤ちゃんは賛(たすく)君と名付けられ、全盲かつ先天性染色体異常・難治性のてんかんも合併していましたが、8ヶ月で自宅へ帰ることも叶いました。
その後、2歳のときに「胃ろう」の手術を行っています。
現在の消息は不明ですが、2歳まで生きていたことは確実で単眼症において奇跡的な一例と言えるでしょう。
どのような姿であれ愛する我が子を大切にするご両親の覚悟が起こした奇跡なのではないでしょうか?
単眼症の大人はこの世に存在する?
単眼症で出生し大人まで生きた例は残念ながら存在しません。
他の重篤な障害と合併することが多く、長くは生きられないのが実情です。
単眼症自体がまれな症例で治療法も確立していないため、合併症を引き起こした場合、治療自体が困難というのもあるでしょう。
【実話】単眼症の赤ちゃんを妊娠した夫婦
現在は超音波などによる出生前診断によって事前に知ることができるため、単眼症であることが判明した段階で中絶を選ぶ夫婦が多いのも事実です。
しかし前述した夫婦のように、実際に出産を選択したケースもゼロではありません。
単眼症が珍しいため、医科大学において症例として記録されることも多いようです。
- 双子を妊娠するも死産
⇒両名とも男児で体重550グラム前後、身長30センチ前後・大脳が分かれておらず、耳の欠損等が見られた - 経済的・身体的理由で中絶を選択
⇒男児で体重110グラム、身長15センチ前後・単眼の顔面奇形あり - 妊娠9ヶ月で陣痛を訴え入院し出産
⇒男児で体重1,700グラム、身長45センチ・鼻欠損が見られる典型的な単眼児を出産、娩出後30分で死亡
三つ目がある人間は実在する?
三つ目と聞くと日本では三つ目がとおるのアニメを連想する方も多いでしょう。
実はインドやドイツで「三つ目」の発症例があるのです。
しかし三つ目の部分の眼球は濁っていたようで、恐らく目としての機能は果たしていないのではないでしょうか。
2021年にドイツで生まれた女の子の三つ目の赤ちゃんについても動画は存在するものの、フェイクだとする声もあり、真偽のほどは不明です。
奇形児のその後は?生きてる?
単眼症だけでなく珍しい病気にかかってしまった人たちは世界中にたくさんいます。
それでもただ悲観するだけではなくドキュメンタリーなどメディアに積極的に出演し、病気や障害への理解を求める人もいます。
様々な困難を抱えながらも懸命に生きる家族の姿として、カナダで起きた難病の例を見ていきましょう。
人形のように小さい少女
カナダに「小頭性原発性小人症」という、100万人に1人が発症する難病にかかったケナディという少女がいます。
体重約5キロ・身長はわずか70センチで、「人形のように小さい少女」と呼ばれました。
通称”MPD”と呼ばれ、成長が著しく遅く、頭や体が極端に小さくなる先天性の病気で、現在の医学では治療法は確立されていません。
脳や心臓の血管に障がいが現れることで血管が薄く細くなってしまうため、破裂すると脳動脈瘤や脳梗塞を発症しやすいという深刻さを抱えています。 引用元:テレ東プラス
ケナディは「持って1週間の命」とされましたが奇跡的に生き延び、大脳が発達しない難病やてんかん発作など合併症を引き起こしながらも両親の愛情を受けてすくすくと育ちます。
【その後】身長が伸びた?!趣味はYouTube?
2020年時点の情報で、ケナディは17歳の誕生日を迎えました。
身長も104センチに伸び体重も24キロに増え、幼稚園児と同じくらいまで成長しています。
最近の趣味はYouTubeで、映画を観に行ったりランチを楽しく過ごしたりと同年代の女の子と変わらない高校生活を送っているようです。
余命宣告?長くは生きられないと診断された?!
ケナディの事例があるとはいえ「小頭性原発性小人症」は20歳までに患者の多くが命を落とす難病です。
月に1度の定期検査でも病気が進行していることが判明しており、担当医からも「長くは生きられない」と言われていますが、今の医学ではどうにもならないようです。
それでもケナディは悲観せずにYouTuberになるという自分の夢に向かって懸命に努力を続けているようです。
現実を受け止めながらも前向きに生きるケナディと家族の姿から、命の尊さを感じさせますね。
単眼症とは目が1つしかない先天性の奇形!治療法はなく、長くは生きられない
いかがでしたでしょうか?
単眼症の正体がわかったと共に、現代の医学でも治すことが叶わない難病や奇病が他にも多く存在しています。
しかしどんな姿であれ尊い人間の命には変わりはなく、ご家族の判断について他人が正解・不正解を決めつけることではありません。
治療法がなく寿命も短いという現実を突きつけられても懸命に生きる姿は、命の大切さを私達に教えてくれるのではないでしょうか。
今後原因の解明とともに、予防策や治療法が確立することを願っていきましょう。