原子爆弾の影響について調べていると、「目玉が落ちる」という話もあります。
原爆というと、凄まじい爆発によって大量の熱と風を生み出す殺人兵器。
人体に有害な放射線も大量に放出される恐ろしいものですが、どうしてそんな原爆で「目玉が落ちる」なんてことがあるのでしょうか?
今回は、その目玉が落ちる現象について、科学的になぜ起こるのかを調べました。
また、その他の原爆の影響についても、実際の画像や写真、経験者の話も交えつつお伝えしたいと思います。
原爆の影響で目玉が落ちる?
原子爆弾の影響について調べていると「目玉が落ちる」という噂があります。
しかし、目玉は頭蓋骨によって固く守られている部位。
熱線で溶けることならあるかもしれませんが、飛び出てしまうことなんてあるのでしょうか?
まずは、その現象が科学的に「あり得るのか」ということを調べ、事実かどうか探っていきます。
原爆により目玉はなぜ落ちる?
結論からいうと、「原爆によって目玉が落ちる」ということは、あり得ます。
その理由は、原爆が爆発すると数千度の熱が発生するため。
熱と気圧は比例の関係にあるので、急激な温度上昇は急激な気圧上昇を引き起こします。
そのため、原爆が投下されるとその中心部では超高温になるとともに凄まじい加重がかかることになるのです。
これによって目玉が飛び出るだけでなく、内臓が口から飛び出てしまったり身体がバラバラになってしまったりという方もいたようです。
ただし、目玉が飛び出る程の高気圧の場所は超高温な場所でもあるため、身体中のタンパク質が解けて蒸発してしまったり高温で焼かれて炭化してしまったりという遺体も多かったといいます。
原爆で目玉が落ちた写真はある?
目玉が落ちる現象は原爆による気圧の変化による加重によって引き起こされるものだということが分かりました。
それでは、実際に目玉が落ちた証拠のようなものはあるのでしょうか?
調べたところ、目玉が落ちた様子の遺体の写真は残っておらず、実際に原爆によって目玉が落ちるかどうかは不明ではあります。
ただ、広島平和記念資料館で実際に掲載されている写真(上図)には、原爆によって目玉が落ち、それを手で受け止めている絵が残っています。
はだしのゲンに目玉が落ちる描写が
中沢啓治さんの漫画「はだしのゲン」には、原爆によって目玉が落ちる描写がありました。
おそらく原爆によって目玉がおちるというイメージを持っている人の多くはこの漫画、もしくはアニメを見たからなのではないでしょうか。
アニメ「はだしのゲン」には原爆が広島に投下されたシーンがあり、原爆の影響で目玉が落ちて身体が焼け爛れていく過程を細かく描写されています。
ぜひ見て確認していただきたいですが、戦争や原子爆弾による影響をリアルに描いた作品なので、覚悟を決めてからにすることをおすすめします。
原爆で目玉が落ちるのを見た目撃者は?
映像には残っていませんが、実際に原爆の被害によって目玉が落ちるのを目撃した方もいます。
原爆による様子を手記で残した吉束三千子さんによると、原爆が落とされた直後、親戚の無事を確認すべく家へ行こうと原爆を落とされた地区の中山峠へ向かう途中に多くの被災した方たちとすれ違ったといいます。
その様子を、三千子さんは、
けが人だらけだった。やけどと膿だらけの人、爆風で目玉が飛び出てしまった人、体や口から内臓が飛び出ている人、そういう人がたくさんいた。
と綴っていると、BBC NEWSは伝えています。
原爆によって目玉が落ちる以外にも、内臓が飛び出ていたり火傷だらけだったり…。
想像しがたい悲惨な地獄絵図に、言葉を失ってしまいますね。
原爆で目玉が落ちるだけでなく即死も?
原爆で目玉が落ちるという点にスポットを当ててきましたが、そのほかにはどのような影響があるのでしょうか。
その身体的被害についてもう少し詳しく調べてみると、とても恐ろしく、そして悲しいことがわかりました。
原爆の震源地から1km圏以内の9割が即死に
爆心地から1km圏内の人や動物は強力な爆発圧力および熱気によってほとんど即死だったそうです。
こちらは、広島原爆ドームの写真。
元々は広島原爆ドームは「広島県産業奨励館」として多くの職員が働いていましたが、原爆投下直後に熱線によって一瞬にして全員が即死で蒸発してしまったといいます。
原爆投下の中心地から1km圏内の家屋やその他の建物、木柱は紛砕され、爆心地の付近は同時に焼失、他はほとんど同時に各所に強い火災が発生したと言われています。
原爆ドームは、本当に残っているだけでも奇跡に近い建物なんですね。
原爆で死ぬ時は苦しい?熱さや痛みはある?
原爆で亡くなった方には、一瞬にして亡くなってしまった方と数時間や数日、数年かけて亡くなってしまった方がいます。
時間をかけて後遺症で亡くなってしまった方は、当然計り知れない苦しみの中で亡くなってしまったのだろうと推測できます。
それでは、一瞬にして亡くなってしまった方はどうでしょうか?
こちらの写真は、座って休んでいた女性が原爆の熱線によって蒸発し、影が残ったと言われる有名な写真です。
また、こちらも、爆心地付近にあったという有名な三輪車で、原爆投下直後は幼児が乗って遊んでいたのではと言われています。
どちらも、広島原爆ドームに行けば実際のものを見ることができますが、一瞬で亡くなった方たちだけでも、熱さや痛みを感じずに済んでいてくれれば、と願わずにはいられません。
遺体の写真はある?
遺体の写真は少ないですが、残されています。
しかし、写真の多くは原爆の被害をうけたものの即死ではなかった負傷者のものです。
多くは全身のいたるところが痛々しく焼け爛れた方々の写真ばかりです。
検索すればすぐにでてきますが、かなりショッキングな写真ですので、興味本位で閲覧するは控えることをおすすめします。
具体的な人体への被害は?
原爆で亡くなった方は正確には分かりませんが、その年内までに13~15万人が亡くなったといわれています。
そんな原爆ですが、被害の範囲が非常に大きかったため、亡くなりはしなかったものの身体に大きな被害をもたらしてしまった方もとても多く存在しています。
原爆によってどのような被害があるのか、5つの被害を写真や証言を交えながら見ていきましょう。
原爆での被害①大やけど
やけどは、爆弾の熱線もしくは熱線が起こした火災による被害です。
多くの人がこの被害に遭い、重症を負いました。
原爆によってやけどを負った人々が川に飛び込むことで、川が死体で埋め尽くされたというのは多くの語り部さんが語っている実話です。
これは熱線や火災により焼かれたことで、川に飛び込んで水を得ようとしたからだと言われています。
どれほど多くの方が川に飛び込むほどの酷いやけどを身体に負ってしまったのでしょう…。
原爆での被害②皮膚のただれ
これは熱線もしくは火災でやけどした肌に残った後遺症で、ケロイドとも言われています。
こちらの写真は、原爆ドームでお店をされていた方で、訪れた方に乞われるとケロイド状になってしまった背中を見せてその凄惨さを伝えていたそうです。
その他にも、検索すると皮膚のただれによる痛みに苦しんでいる人の写真がでてきます。
大変ショッキングな写真も多いため興味本位での検索がおすすめしませんが、多くの人がこの皮膚のただれの後遺症で苦しみ、亡くなったといわれています。
熱線を浴びた人の中には、肌が露出していた部分(着物以外の部位)だけ焼けただれるという現象も確認されています。
原爆での被害③放射線
原爆の後遺症として最も恐ろしいのが放射線です。
放射線を浴びた人は10日以上たってから髪の毛が抜けはじめ、歯ぐきから血が出たりするようになり、やがて皮膚の下に血がたまってむらさき色の身体に斑点(死の斑点ともいいます)が浮かび上がり、血液障害(白血球の減少)や消化管障害(嘔吐や下痢)を引き起こして、多くの方が被爆後1カ月くらいで亡くなってしまいます。
上記の、手記を残した三千子さんも放射線の被害にあったひとりです。
BBCニュースでは、
放射線障害の症状が出始めた(中略)はぐきや鼻から出血し、ひどい下痢を起こし、髪の毛が抜け、体中に紫斑が出た
という内容も取り上げられています。
誰もが死ぬと思った中で奇跡的に生還されたそうですが、それでも生涯を通じて原爆症と闘い続けていたといいます。
NHKニュースによると、広島・長崎の原爆による被ばく者数は、2024年現在約10万6800人となっているそうで、平均年齢は85.58歳となっています。
いまなお放射線の被害で苦しまれている方がこんなにいらっしゃるんですね。
原爆での被害④ガラスが刺さる
原爆のすさまじい爆風によって、ガラスがこまかく砕けて、身体に突き刺さったという方も多いです。
上の写真は、原爆被害にあった当時に被害者が纏っていたとされている服です。
ガラスだけでなく、がれき等もとんできてボロボロになってしまったのだということが想像されますね。
ガラスの破片が大量に突き刺さるというのは、想像を絶する痛みだと思います。
下記は、長崎新聞に掲載された丸田和男さんの言葉です。
自分と同じように肌にガラス片が突き刺さった人、やけどを負った人、すでに虫の息の人、励ます声や泣き叫ぶ声が聞こえ、この世の地獄だと感じた
丸田さんは、爆心地から1.3kmの場所にいましたが、背中と後頭部に飛んできた無数のガラス片が突き刺さったといいます。
体にささったガラスは、とれなくても時間をかけて肉や皮膚に埋もれていくと言われており、実際に語り部さんの中にも「今もガラスが入っているけど痛くない」と話されている方がいました。
原爆での被害⑤ウジが湧く
原爆による被害に受けた方は、多くのやけどや傷を負って防空壕へ駆け込んだそうです。
そこでさらに被害にあったのが、傷口にウジが湧くというものです。
上記に紹介した「はだしのゲン」でも、身体にウジが湧いてしまっている方が多く描写されています。
「母、八千代の記憶」という原爆被爆者の看護をしていた母の紙芝居を制作した山下豊子さんは、その紙芝居の中で
包帯の下がモゾモゾと動きます。ウジです。丸々と太ったウジが傷口からわき上がってきます。
という描写をしています。
上記のような被害とは言えないかもしれませんが、虫がダメな人にとっては最悪でしょうね。
被ばくによって免疫が落ちることで生きているうちからウジに食べられ始めることもあるそうで、筆舌しがたいかゆみと痛みに襲われるそうです。
しかし、ウジは腐った肉の部分だけを食べてくれるので傷の治療には良いという見解もあります。
現在ではマゴット・セラピーというウジ(しかし無菌ウジに限る)を使った傷の治療も行われていますが…。
それでも、明らかに無菌ウジではないので、他の感染症も引き起こしてしまいそうですよね。
原爆で目玉が落ちるは本当だった!
ここまで、「原爆で目玉が落ちる」という現象について調べ、実際起こった話なのか噂のもとはどこにあるのかについて調べました。
その結果、目玉が落ちるのは本当の話で、この話が拡がったのは「はだしのゲン」という被害の様子を詳細に綴っている漫画によるものではないかと考えられます。
原爆は、大量の熱と放射線によって多くの人の命を奪い、生活を奪ったもので、今なお痛みを抱えて生きている方も多くいらっしゃいます。
原爆なんて凄惨なものが、もう2度と使われないよう願っています。