ネット上では「いじめ加害者は勝ち組」という意見が一部挙がっていることがあります。
いじめ問題は人の命に関わることもあり、加害者が勝ち組となることは容認できるものではありません。
ではなぜ、「いじめ加害者は勝ち組」などという肯定してはいけない意見が挙がることがあるのでしょうか。
いじめ問題として全国的に有名となった、旭川いじめ加害者のその後の人生についても調べました。
勝ち組のままの人も?いじめ加害者の末路とは?
ネット上では「いじめ加害者は勝ち組」という意見が挙がることがあるようです。
なぜ、このような受け入れ難い意見が挙がることがあるのでしょうか。
また、実際にはいじめ加害者はどのような末路となるのか調査しました。
いじめの加害者には勝ち組が多い?
ネット上で「いじめの加害者は勝ち組」と言われるのは、自分が被害者側にならないようにうまく立ち回ることができるためです。
社会では、うまく立ち回りができることによって、人間関係を良好に保ったり、仕事でチャンスを多く得たりなどすることができ、人生の勝ち組の流れに乗ることができます。
そのため、立ち回りがうまくていじめの加害者側に回れる人は、人生の勝ち組になれると言われることがあるようです。
たしかに、立ち回りがうまいことは、人生の勝ち組になるために必要な要素の1つではあります。
しかし、そこにいじめの加害者となった影響が含まれると状況は大きく変わり、その影響があることで勝ち組となることは難しいでしょう。
また、「いじめの加害者は勝ち組」という意見は、いじめ問題を解決していくためにも認めるべきではないでしょう。
末路①:加害者として特定される
いじめの事件では、加害者が未成年の場合もあり、名前や顔写真などが公開されないこともあります。
しかし、友人や周辺住民などの事件から近い関係を持つ人であれば、いろいろな情報が入ることになります。
中には、自ら進んで加害者の情報を集めて、加害者を特定しようとする人もいるでしょう。
末路②:ネットに情報を晒させる
今では誰でもネットに情報を上げることができます。
そのため、加害者や事件のことを知っている人の中には、その情報をネットに上げる人もいます。
また、それらネットに上げられたいろいろな情報を集めて、ネット情報から個人を特定する人も出てくるでしょう。
さらに、個人が特定されると、名前や顔写真、普段の生活や現在の様子などの個人情報が晒されるようになってしまいます。
ただし、名前や顔写真が公開されていないのに、ネット上に加害者の実名や顔写真などを上げることはプライバシー侵害です。
また、誹謗中傷や名誉毀損となる可能性があるので、知っている情報があるからとSNSなどに投稿してはいけません。
【要注意】投稿者が加害者になるパターンも
また、ネットの情報には尾ヒレが付いたり、誤情報が出回ったりなどすることも多いです。
実際に、加害者でない人が加害者としてネットで個人情報が晒されて、新たな被害者を生んでいることはよくあります。
誤情報の投稿をすれば、今度は情報を投稿した人が加害者となります。
今一度、ネットの使い方や人の権利について考えてみましょう。
末路③:罪に問われる
いじめが事件となれば、加害者は罪に問われることになります。
いじめの内容によって問われる罪は異なりますが、主に暴行や障害、強要や恐喝、器物破損などになるでしょう。
もし、裁判で罪が認められた場合は、その罪を背負って生きて行くことになります。
末路④:孤立する
いじめの加害者と周囲に知れ渡れば、その加害者と深く関わりたくないと考える人もいるでしょう。
そのため、いじめが発覚すると、加害者はこれまでの人間関係や信頼を失って、孤立してしまうこともあります。
末路⑤:後悔する
いじめが発覚して事件になれば、ネットで個人を特定されて個人情報を晒される可能性があります。
また、罪に問われたり、周囲からは人がいなくなってしまうこともあるでしょう。
その影響は現在の生活だけでなく、その後の人間関係や仕事にも大きな影響を与えることになり、常にいじめをしたことに対して後悔し続けることになるはずです。
因果応報を受け、辛い思いをしながら地獄のような生活を送る末路となったいじめ加害者の様子を考えると、「いじめの加害者は勝ち組」とは言えないでしょう。
大津市中2いじめ自殺事件と加害者のその後
いじめは人の命に関わることもあり、ニュースなどで大きく取り上げられることもあります。
人の命を奪った加害者がその後の人生で勝ち組となることは考え難いでしょう。
加害者の背負ったものの大きさを知るためにも、有名ないじめ事件の末路や加害者のその後を確認してみましょう。
事件の概要
大津市中2いじめ自殺事件は2011年に起こった事件で、被害者はプロレスごっこと称して、加害者たちに押さえつけられたり、殴ったりなどの暴行を毎日受けていました。
他にも、顔を踏みつける、消しゴムのカスを頭にかける、プリントを口に入れられるなどの被害も受けていたそうです。
被害者が「やめて」と頼んでもいじめは止まらず、自殺の練習を強要したり、被害者のパンを食べられたりなど、内容はエスカレートしていきました。
いじめに耐えきれなくなった被害者は自宅マンションから飛び降り自殺しました。
その高さは14階で、病院に搬送されましたが、その病院で死亡が確認されることとなります。
大津市中2いじめ自殺事件の加害者は誰?
加害者は被害者の同級生の男子で、6人いたと言われています。
そのうち、主犯格だった3名が罪に問われることとなりました。
また、この事件では学校のいじめに対する対応も問題視され、遺族側は大津市に対して約7720万円の損害賠償を求めて提訴しました。
大津市中2いじめ自殺事件の判決は?
この事件で罪に問われた加害者の3人のうち、2名には約3700万円の賠償命令が出ました。
あとの1名は当時13歳であり、刑事罰の対象とならないことから、児童相談所への送致となっています。
また、大津市は遺族側の意見と争う姿勢を始めは見せていましたが、いじめの事実が発覚したことで和解に向けての方向転換をします。
その後は1300万円で和解が成立しました。
また、大津市からは和解金以外に、見舞金2800万円と学校で実施されたアンケートを受け取る際に部外秘とする不当な確約を迫られた精神的苦痛に対する慰謝料30万円も支払われています。
大津市中2いじめ自殺事件の加害者の現在とは?
大津市中2いじめ自殺事件の加害者についてですが、その現在は不明です。
事件後に転校したようですが、個人と家族までが特定され、個人情報が晒されたことで、日本での生活が困難と感じたことから海外へ引っ越したという噂もあります。
もし、本当に海外に引っ越したのであれば、個人が特定されて批難を受け続けていた日々がきっと地獄だったのでしょう。
旭川女子中学生いじめ凍死事件と加害者のその後
旭川女子中学生いじめ凍死事件も世間に衝撃を与えたいじめ事件の1つです。
加害者のその後についてはネットでも度々取り上げられているようです。
いじめの概要と、加害者の現在を調査しました。
事件の概要
旭川女子中学生いじめ凍死事件が起こったのは2021年で、被害者は廣瀬爽彩さんです。
いじめは中学入学後から始まり、性的ないじめや無理矢理奢らせるなどの被害を受けていました。
また、10人の加害者に囲まれて煽りを受けたことで、4mの高さから川に飛び込む自殺未遂を行ったこともあります。
その後に中学校を転校することにはなりますが、いじめがきっかけでPTSDとなってしまいます。
廣瀬爽彩さんはその症状に1年苦しんだ末路に、-17度の極寒の中、夜に家を抜け出し、その約1カ月後に凍死した状態で発見されました。
旭川女子中学生いじめ凍死事件の加害者は誰?
この事件の加害者の主犯格は2学年上の少女1名、少年2名と言われています。
他にも、これら加害者の友人である少女1名や少年1名が加わったり、ときには小学生を含む10名以上でいじめが行われることもあったようです。
廣瀬爽彩さんの母親は学校や担任に対して4度の相談をしましたが、加害者を庇うような対応をされ、いじめは黙認されていたそうです。
その学校の不誠実な対応にも批難が殺到することになりました。
加害者への処分はなし?
廣瀬爽彩さんが川で自殺未遂をした際には警察沙汰となりました。
しかし、その際には性的ないじめに対しては加害者は当時14歳未満であったことで、児童ポルノに関する事件として刑事責任を問うことができませんでした。
無理矢理奢らせるなどの強要罪についても証拠不十分で厳重注意をされただけでした。
廣瀬爽彩さんの命についても、いじめによるPTSDが関係していると考えられていますが、そのことについても加害者への処分は何もされていません。
また、学校への処分も何もされていません。
旭川女子中学生いじめ凍死事件の加害者の現在とは?
旭川女子中学生いじめ凍死事件は加害者も、学校も、何も処分がされていないことでネットでは炎上騒ぎとなり、加害者や学校関係者などを特定しようとする動きが活発化しました。
しかし、あまりにネットが過熱したことで、加害者ではない人が加害者として個人情報が晒されたり、加害者を特定しようとして暴走した突撃取材を行ったYouTuberが逮捕されるなど、別の事件まで発生する事態となってしまいました。
ただし、この事件はまだ解決に向けて動いている途中です。(2022年5月現在)
2022年3月~4月には第三者委員会が調査を行い、いじめがあったことが認定されました。
そのため、旭川女子中学生いじめ凍死事件の解明についてはこれからとなります。
神戸教員いじめ事件と加害者のその後
神戸教員いじめ事件は世間にいじめは大人の世界でも起こることを印象付けました。
また、その大人のいじめが、本来であればいじめを止めるべき立場の教師が行っていたことに多くの人が衝撃を受けたことでしょう。
その事件の内容と加害者について確認してみましょう。
事件の概要
神戸教員いじめ事件は2019年に発覚しました。
いじめが始まったのは2018年からで、テレビのニュースなどでよく流れていた激辛カレーを羽交い締めにして、被害者に無理矢理食べさせる動画は2018年の9月に撮影されたもののようです。
他にも、暴行や言葉による人格否定などのハラスメントも行われていました。
被害者や被害者の同僚がいじめについて校長に相談もしましたが、校長は対応しなかったようです。
また、校長は後任の校長にも、教頭にも、いじめについて情報共有もしていませんでした。
いじめが続いたことで、被害者は嘔吐や睡眠障害などの症状が出るようになり、出勤できなくなってしまいました。
しかし、2019年の10月頃からテレビでいじめの報道がされるようになり、ようやく解決に向けて事態が動き始めることになります。
神戸教員いじめ事件の加害者は誰?
神戸教員いじめ事件の加害者は男性教諭3名と女性教諭1名です。
いじめ発覚後、加害者たちはSNSやメディアなどで謝罪文を出しました。
しかし、その謝罪文の1つに「自分の可愛がっていたつもり」「被害者が苦しんでいる姿を見ることが辛い」のような内容があり、加害者は反省していないと炎上することになりました。
また、他の謝罪文も内容が薄く、反省が感じられない印象を持った人は多くいるようです。
加害者への処分は?
加害者の4名のうち、2名は懲戒免職となり、他の2名は停職3カ月と減給3カ月となりました。
「停職3カ月と減給3カ月は処分が甘い」という世間の意見もありますが、教師にとって停職3カ月と減給3カ月は「職場では必要としないので自主退職してください」という意味が込められる場合もあるそうです。
また、管理責任の問題から、校長と後任の校長の2人にも停職3カ月と減給3カ月の処分が出ました。
神戸教員いじめ事件の加害者の教員の現在とは?
加害者は事件発覚後にネットで個人情報が晒されて、外出もできない状態となったようです。
精神的にも追い詰められて憔悴していたそうですが、因果応報といえるでしょう。
また、停職3カ月と教諭は停職明けに市教委へ異動となり、減給3カ月となった教諭は教師としての適性がないと判断されて事務を行っていると言われています。
いじめ加害者は勝ち組にはなれない
「いじめ加害者は勝ち組」とネットでは言われることがあるようです。
しかし、いじめ加害者の多くは後に個人では背負いきれない後悔や責任を負うことになります。
それらを背負うことは因果応報であり、その後の人生の末路で地獄を見ることもあるでしょう。
そもそもいじめは解決するべき問題です。
議論は加害者のことではなく、いじめをなくす方法についてするべきでしょう。