日本の最南端に位置する沖ノ鳥島。
最近は中国からの領域侵犯等で注目を集める小さな島ですが、実はそれだけでなく「日本ずるい」と世界規模で問題視されることもあります。
当記事では沖ノ鳥島がどのような島なのか、日本はなぜ「ずるい」と言われているのか解説していきたいと思います!
沖ノ鳥島がずるいと言われる理由とは?
沖ノ鳥島が「どこに島があるの?」と思った方もいるかと思います。
そんな沖ノ鳥島ですが、写真から見てもわかる通り、ちゃんと海面から地面をのぞかせている「島」になっていますよね。
この沖ノ鳥島が他国からずるいと言われるのは、「日本政府がただの岩礁を島と判別しているから」。
沖ノ鳥島が島なのか岩なのかどちらでも良いと思うかもしれませんが、実は排他的経済水域を考えた際に「島」であることでその広さが変わってきます。
排他的経済水域内では他国が自由に漁や採掘をすることができないので、他国の中には「排他的経済水域や大陸棚を有するべきではない」と主張している国もあり、日本が沖ノ鳥島を領土とすることを認めていない国もあります。
それでは、本当に日本はずるいのか、映像とともに確認してみましょう!
満潮時の見た目が完全に岩
上記は工事前の沖ノ鳥島にある北小島です。
写真で見て分かる通り、完全に岩ですよね。
他国が「島ではなくただの岩だ」と主張するのも分かりますね。
沖ノ鳥島の地には、北小島と東小島と呼ばれる二つの島?があり、満潮時には地盤は海面下に沈み北小島と東小島だけが水面上に残ります。
満潮時にちゃんと水面上にも残っているため、日本政府は「島だ」と主張しています。
Googleマップなどでネタにされることもしばしば…
GoogleMapで調べてみると、本当に沖ノ鳥島は絶海の孤島で、日本の本州までの距離よりも台湾やフィリピンの方が近いような場所にあります。
そして、GoogleMapでは口コミが300件近くあります。
「こんなに訪れた人がいるの⁉」と思うかもしれませんが、実はこれらのほとんどは冗談でのコメント。
実際に沖ノ鳥島への船は出ていませんので、真に受けないようにしましょう。
「筋斗雲で訪れた」や「海亀を助けたら連れてきてもらった」「イルカの渋滞に巻き込まれた」など、面白いコメントがたくさん書かれています。
こんなネタにもされている沖ノ鳥島ですが、これでも国家の大切な問題であり日本を支えている島でもあるのです。
沖ノ鳥島は過去に人が住んでいたことも?
満潮時の岩の先っぽしか見えていない写真のイメージが強い沖ノ鳥島ですが、意外と干潮時の島の大きさは大きく、歩けば11kmもあるそうです。
そんな沖ノ鳥島は、SNSでよく
沖ノ鳥島住みなのバレました
— すいせい (@1p_Halley7532) January 19, 2023
沖ノ鳥島住5歳です
— めりー (@osyouyugokkun) July 30, 2020
というツイートがあります。
完全にネタでのツイートというのはわかりますが、ふと疑問に思ってしまうのが、「過去沖ノ鳥島に人が住んでいたことはあるのか」ということです。
調べてみると、16世紀にスペイン船が沖ノ鳥島を訪れた記録が残っていて、沖ノ鳥島は「パレセベラ」という名前を付けられていました。
ただ、当時もあまりに小さな島だったためか居住者はいなかったとされています。
もっともっと過去に遡ってみるとわかりませんが、痕跡も波にさらわれてしまっていますし、あまりに陸の孤島すぎて住めなかったのではないでしょうか。
ただ、現在の沖ノ鳥島は研究者や護岸工事のための工事関係者が泊まり込んで作業をしていることから、全くの無人とは言えません。
それが、船住まいだったり観測所住まいだったりする可能性もあるので、「居住者」として適切かどうかはわかりませんが。
沖ノ鳥島を守る理由は?島でないといけない理由!
誰がどう見ても沖ノ鳥島は岩だと思いますが、なぜ日本政府はそこまで島だと主張するのでしょうか?
実は沖ノ鳥島は日本にとって欠かせない島であり、沖ノ鳥島がなくなると経済に大きなダメージを及ぼしてしまう原因になりかねないのです。
日本が沖ノ鳥島を守る理由や地形、面積などについて見ていきましょう。
沖ノ鳥島はどんな島?
沖ノ鳥島は北小島と東小島の2つからなる小さな島。
島自体は何か産物があるわけではありませんが、その周囲の海域は漁業資源が豊富で、クロカジキやメカジキ、キハダマグロなどの他、43種もの魚がいるということが分かっています。
また、東京大学の研究では、沖ノ鳥島付近には世界需要の数百年ものレアアースが眠っているということが明らかになり、コバルトやマンガンといった海洋鉱物資源を得るためにもとても重要な位置づけになっています。
それだけでなく、近年は周囲の表面海水温度が一定であることと近くに海嶺があり海深くの冷たい海水が利用できることから、海洋温度差発電の適地としても候補に名前が挙がっているといいます。
漁業資源や海底に眠るレアアースだけでなく発電という価値までついた沖ノ鳥島の価値は計り知れないものがありそうです。
沖ノ鳥島の位置や大きさ
沖ノ鳥島は北緯20度25分・東経135度04分にあり、東京都小笠原村に属している日本の最南端に位置している島です。
小笠原諸島の一部とされているこの島ですが、東京都心から約1700㎞も離れており、船で行くと4日間もかかる、まさに絶海の孤島。
島の大きさは干潮時には、東西に約5.8km、南北に1.7kmになるとされています。
写真のように東西に長細く11kmで島をひと周りできる大きさだそうなので、かなり小さな島だということが分かります。
愛知県にある佐久島という島の海岸線が11.6kmだそうですので、比較してみたらわかりやすいかもしれませんね。
沖ノ鳥島周辺の環境
沖ノ鳥島の周辺は、島が崩れないように、コンクリートやブロックで埋め立てています。
沖ノ鳥島は台風が発生する場所とも非常に近いため、毎年強い風雨や波にさらされていると言われています。
国連海洋法条約的に、島は「自然に形成された陸地」で、満潮時でも水面上にあるものとされていますので、日本としてはどうにかこの条約に則りながら自然な状態の沖ノ鳥島を残そうと四苦八苦しているようですね。
そして、沖ノ鳥島の近くには観測施設を設けていて、波からの浸食保護や地震に備えるほか、温暖化による潮位の観測等の研究が行われているそうです。
日本国内では唯一の熱帯気候とされていて、1年を通して気温は27度程度、海水温度は28度程度となっています。
この安定した海水温から、近隣の海嶺の冷たい海水と温かい表面海水を混ぜて生まれる温度流から安定して発電ができるのではと海洋温度差発電の適地として候補に挙がっているそうです。
沖ノ鳥島の地形
沖ノ鳥島の地形はなすの形をしていて、海山の頂上に発達した環礁があります。
九州からパラオまでの海嶺を経由しています。
中新世時代に火山島が水没して、沖縄や小笠原諸島から流れて来たサンゴに1500万年ほどの歳月をかけて1500m以上推積して造られたと考えられています。
水深は4000~7000mにも及び、富士山より高い火山島だったということでしょう。
干潮時の面積は東京ドーム●個分!?
沖ノ鳥島の千潮時の面積は約5.8㎢とされていて、東京ドーム107個分の広さがあるとされています。
国際的に海岸の定義は干潮時の広さで登録されるため、数字上では沖ノ鳥島は決して小さすぎる島だという認識はありません。
しかし、満潮時には北小島と東小島だけが数十センチくらいだけ顔を出すという標高の低い島なため、「島ではなく岩だ」という論争が起こっているのです。
日本は、島の周囲をコンクリートで固めることでなんとか岩が削れるのを防ごうとしていますが、それでも波の浸食や風雨によってどんどん小さくなっているといわれています。
沖ノ鳥島はフィリピン海プレート上にあるためか地盤沈下のスピードが100年で1cm程度と緩やかであることが分かっていますが、地球温暖化で海水面が1mも上がってしまうと地図上から消えてしまう可能性も指摘されています。
沖ノ鳥島を守る理由とは?何が凄い?
沖ノ鳥島が大きいのも昔の話であり、今では見た目は岩でしかありません。
それでも日本がかたくなに沖ノ鳥島を守っている理由は、排他的経済水域が関係しています。
排他的経済水域は「島」から200海里の円状の水域で、自国の人だけがその水域の魚を捕ったり天然資源の発掘や開発、保存をしてもいいとされている海域です。
下記が排他的経済水域についての条約文です。
海洋法に関する国際連合条約
第百二十一条 島の制度
1 島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるものをいう。
2 3に定める場合を除くほか、島の領海、接続水域、排他的経済水域及び大陸棚は、他の領土に適用されるこの条約の規定に従って決定される。
3 人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない。
他国は排他的経済水域を自由に通行することはできますが、豊富な海洋資源を目にしていても漁も採掘もできないので、「日本ずるい」と思ってしまうというわけですね。
日本は約38万㎢の国土面積に対し、約405万㎢もの排他的経済水域を持つ国。
沖ノ鳥島の排他的経済水域は約40万㎢と日本全体の排他的経済水域の約1割を占めていて、沖ノ鳥島1つで日本の国土面積よりも広い排他的経済水域を得ることができるということが分かります。
もし沖ノ鳥島がなくなってしまったら、それだけの領域の水産資源を失ってしまうを思うと、ゾッとしてしまいますね。
それだけでなく、沖ノ鳥島付近には世界需要の数百年ものレアアースが眠っているということも明らかになり、天然資源があまり取れない日本としては絶対手放せない場所になりました。
でも、「沖ノ鳥島は島じゃない!」と主張している国からすると、資源を独り占めしようとしている日本はやはり「ずるい」と映ってしまうのかもしれませんね。
沖ノ鳥島の保全にかける費用は?
沖ノ鳥島を保護する周囲のブロックと、コンクリートの埋めた立てなどで750億の費用がかかると言われています。
東京ドームの建設費は350億円で、使用料も含めて数千万単位です。
沖ノ鳥島はサンゴ礁等岩礁で出来た島なので、火山等からできた島よりも地盤が脆くなっています。
また、先ほど話した通り台風の発生する場所に近いためにより強い波や風雨に晒されることで日夜削られていると言います。
この消滅しやすい島をなんとか守るために多大な費用をかけているわけですが、埋まっている資源や水産資源を考えると安いものなのかもしれませんね。
沖ノ鳥島が島でなくなると…
沖ノ鳥島が実際になくなるとどうなるのか調査し、専門家に話を聞いてみたものの答えは返ってこなかったようです。
しかし、沖ノ鳥島の排他的経済水域は日本の国土面積(38万㎢)以上の約40万㎢もあり、漁業資源だけでも計り知れない損失になってしまうことがわかります。
また、継続している調査やスタートしている研究も排他的経済水域で亡くなれば打ち止めとなってしまう可能性が高く、理化学的な損失も計り知れないでしょう。
海底に眠る資源もありますから、日本としては「なんとしてでも島にしたい」ところですよね。
ただ、沖ノ鳥島はプレート上というかなり特殊な立地のためか、地盤沈下のスピードも緩く、100年で1cmしか沈んでいませんが、裏を返せばそれだけ少しずつ沈んでいるということ。
今は満潮時に6cmしか頭を出せていない岩は600年後には確実に沈んでしまいますし、そうでなくとも温暖化によって徐々に海面上昇が起こっています。
今は「島だ」「岩だ」という論議を続けていますが、そう遠くない未来に全体が沈んでしまってなくなってしまうかもしれませんね。
沖ノ鳥島はずるいのか?外国からの反応は?
日本が沖ノ鳥島を独占している事に対して、外国ではどのような反応があるのでしょうか?
島だと認めていない国はアジア圏であり、台湾や中国は沖ノ鳥島が日本のものである事を否定し続けています。
沖ノ鳥島は法律でも岩ではなく島とされている
国際法の法律によれば、沖ノ鳥島は「島」と認められることも出来ますが「岩」だという反論も出来ます。
国際海洋法の第1項では「島とは自然に形成された陸地である事」とされていて、第3項では「人間の居住を維持できない岩とすれば排他的経済水域を有する事は出来ない」と決まっています。
日本は、第1項に従い沖ノ鳥島を「島」であると判断しました。
台湾の主張は?
台湾では、日本が沖ノ鳥島で排他的経済水域を有するのは認めていません。
なぜ認めないかというと、沖ノ鳥島の排他的経済水域に台湾船が入り込み船長らが逮捕された事件があったようです。
台湾側は、上記で前述した国際海洋法第3項に基づいて「岩」であると主張し、排他的経済水域を有するのはおかしいと判断しました。
そして、台湾政府が日本に対して船長の釈放要求と講義デモを起こしました。
結果、台湾政府の主張は認められず、600万の担保金を日本に支払い船長を釈放しました。
韓国の主張は?
沖ノ鳥島は日本の拠点だけではなく、アメリカの軍事基地があります。
韓国は沖ノ鳥島に対して、曖昧な主張で距離を置いている状態です。
なぜかというと、韓国は中国とアメリカに対して外交を追求していて両国から嫌われる事への懸念があります。
なので、アメリカの領土でもある沖ノ鳥島に批判をすればアメリカの機嫌を損ね、アメリカの肩を持っても中国の機嫌を損ねてしまうのです。
韓国は両国の領有権をめぐる争いをなくして平和を願いたいという距離を置いた主張をしています。
また、日本との竹島問題もあり沖ノ鳥島の排他的経済水域の無効化を訴えるのは難しいでしょう。
北朝鮮の主張は?
朝鮮側の言い分も、中国や台湾の主張と同じく沖ノ鳥島が「島」である事を認めていません。
国連海洋法協約で規定された島の範疇に属していないという主張で、講義活動が続いています。
中国の主張は?
日本の排他的経済水域であるのにもかかわらず、中国側は勝手に水域内に潜入し調査を続けていた事が問題となり日本政府が抗議しました。
中国は、「岩」であるとし領土は認めるものの排他的経済水域を有するのは認めないと言います。
しかし、中国は南沙諸島のジョンソン南礁という場所を保有していて、その島は満潮時になると沖ノ鳥島と同じように小面積になるので日本が言っている事とそう大差はありません。
南沙諸島は元々日本が領有権を持っていたのですが、第二次世界大戦の敗北によりサンフランシスコ平和条約で領有権を放棄してしまいました。
南沙諸島の問題を棚にあげる中国に批判の声が集まる
南沙諸島で中国は滑走路で埋め立てするなどの人工島を建設していて、他国からの批判が強まっています。
地図では南沙諸島はいくつかの小さな島が多くあり、ベトナムとフィリピンの間にあります。
満潮時には顔をみせなくなる岩礁もあり、法律上は島だと認める事は不可能ですが人工島を作る事によって島であるかのように示しています。
中国は南沙諸島の件に至っては、「法的根拠がない」と主張していてまともに話し合う姿勢を見せようとしていません。
中国は批判の集まる中無許可調査も…
中国船が沖ノ鳥島の排他的経済水域に侵入しただけでなく、2017年にも尖閣諸島(石垣島)で泥の採取をしていた事が分かりました。
24時間の調査と30分に1度の泥採取をしていて、更には複数の船で来ていた事も明らかになりました。
調査員らは巡視船の中止要求に対し、「中国政府から許可を得てやったこと」だと反論していて反省の色を見せる事はありませんでした。
安全保障の観点でも沖ノ鳥島を守る意味がある
沖ノ鳥島は日本経済だけでなく、世界平和を保っているという説があります。
中国とアメリカが戦争せざるを得ない状況になった時、中国は調査のために太平洋側に潜水艦を送り込まなければなりません。
しかし、日本の領土である事から中国は潜水艦を太平洋側に安全に送り込む事は出来ないためアメリカを攻め込むのは難しくなってしまうわけです。
沖ノ鳥島はずるいと言われるが、大事な役割がある
沖ノ鳥島は一見変哲もない岩のようにも見えますが、実は日本経済においてとても重要な役割がある島です。
沖ノ鳥島は浸食されやすく消滅しやすい島ですが、島の周りを必死にコンクリートで埋めてなんとか浸食を食い止めており、近年ではサンゴを植えて陸地を作るための工夫も考えられているのだとか。
漁業資源や海底資源という観点だけでなく、様々な開発や研究にも役立っている沖ノ鳥島。
アジアの国々からは色々言われることも多いですが、個人的にはぜひ今後も島として存続していただき、排他的経済水域含めて管理してもらえたらと願っています。